大学入試改革の影響(高校受験編)

2020年1月実施分を最後にセンター試験が廃止され、代わってスタートするのが「大学入学共通テスト」(以降、「共通テスト」)です。これまでのセンター試験と同様、1月中旬の2日間で実施され、新高校2年生(2019年4月時点)が3年生になるタイミングから、この「共通テスト」を受検することになります。

「共通テスト」は、現行の学習指導要領で学んだ生徒が受検する2020~2023年度と、次期学習指導要領で学んだ生徒が受検する2024年度以降で、出題・解答方法などの制度設計を分けて検討されていますが、変わるのは名称だけではありません。

現在のセンター試験からの大きな変更として、これまでになかった記述式問題の導入と、英語では4技能(読む・聞く・話す・書く)を評価することが挙げられます。

また、共通テストの導入にあたっては、「知識・技能」だけでなく、大学入学段階で求められる「思考力・判断力・表現力」を一層重視するという考えがベースにあるため、例えば、複数の情報(文章・図・資料)を組み合わせて思考・判断させる問題や、高校での学習場面を想定した設定の問題、当てはまる選択肢をすべて選択する問題、解なしの選択肢を解答させる問題等々、既に複数回実施された試行調査(プレテスト)では、作問や出題形式にこれまでとは違った傾向が見られました。

大学入試制度改革今後の流れ
2019年度「高校生のための学びの基礎診断」実施
2020年度「新学習指導要領」小学校で全面実施、「大学入学共通テスト」実施
2021年度「新学習指導要領」中学校で全面実施
2022年度「新学習指導要領」高校で実施
2024年度「新学習指導要領」での入試初年度、「大学入学共通テスト」で情報Ⅰ実施
大学入試制度改革4つのポイント
・国語と数学で記述式問題の導入
・英語は4技能を評価、資格・検定試験を活用
・一般試験でも調査書や小論文、面接等の導入を検討
・推薦試験でも学力評価を重視

特に記述式の導入や英検活用などのトピックスについては広く認知され、危機感を持って準備を進めているという方も多いのではないでしょうか?景況感にもよりますが、記述式を避けて私大に受験者が流れるという予測もありますし、将来を見据えて小学生のうちから英会話教室に通ったり英検受験に取り組むご家庭も増えています。

ただし、改革の実行自体は決まっていても、具体的な中身についてはまだまだ議論の余地を残しており、多分に流動的な側面があることも事実です。

では、そうした状況を踏まえて、受験の現場では何が起きているのか。そして今後どういった流れが想定されるのか、埼玉県の高校受験という観点に立って検証したいと思います。

① 入試問題が共通テストの傾向を踏まえたものに

公立高校入試においては、以前から記述問題の比率が高まりつつありましたが、最近では私立高校入試においても、特に上位校を中心に記述式を導入する動きが始まっています。また、公立入試の理社では“当てはまる選択肢をすべて選択する問題”も既に出題され始めています。

埼玉は、関東圏の中でも比較的“新傾向に敏感”な県とも言われており、今後もこういった傾向に拍車がかかる可能性は高いと言えるでしょう。

② 付属人気の向上

特に中学入試では顕著な動きになっていますが、高校入試においても付属人気は高まっています。先々どうなるか流動的な部分が大きいだけに、早めに学歴を担保したいと考えるのは当然の流れでしょう。

ただし、人気が高まるということは、合格するための難易度が高まるということでもあります。事実、一般入試での偏差値水準だけでなく、推薦入試における内申ボーダーも、各校上昇傾向にあります。

元来高難易度な水準にあることもあり、プラスアルファの加点要素も影響度を増していますので、英検などの検定取得も怠らず、早めの準備を心がけておいた方が良いでしょう。

③ 柔軟な受験指導を期待した私立人気の向上

上記の付属人気にも関連しますが、先行きの見通しが悪いからこそ、進学実績に定評がある、もしくはそういったイメージの強い私立高校への人気が高まっています。

2018年度、埼玉県では初めて公立高校志願者の割合が7割を下回りましたが、従来受け皿となってきた県内私立はもちろん、都内の私立高校に進学する層も相当数増加しており、今後もこうした傾向が続いていくことが予想されます。

いずれにしても、今の中学生にはかわいそうなぐらいに、現在の受験制度は流動的で先行きの見通しが悪い過渡期にあります。

何が起きるか分からないからこそ、受験生になって後悔することがないよう、各種の長期的スパンにたった準備を心がけるようにしたいものです。