いよいよ秋の気配も濃くなり、食欲の秋、運動の秋等々、様々に魅力的な季節になってきました。
その中でも、やはり学業面に目を移せば、読書の秋にこそ勤しみたいもの。しかもどうせなら、入試で出典される書物に触れておけば一石二鳥というもの。そこで、埼玉県公立高校入試において、過去にどういった作品が採用されてきたのか、現行の制度になってからの7年分を、まとめてみました。
埼玉県公立高校入試 出典一覧
大問1(文学文)編
年度 | タイトル | 出版年 | 筆者 |
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2012 | 鉄のしぶきがはねる | 2011 | まはら三桃 |
2013 | ツバサの自由研究 | 2012 | 水野次郎 |
2014 | 林業少年 | 2013 | 堀米薫 |
2015 | 将棋ボーイズ | 2014 | 小山田桐子 |
2016 | 強者の同盟 | 2015 | 壁井ユカコ |
2017 | 白線と一歩 | 2016 | 武田綾乃 |
2018 | リーチ先生 | 2017 | 原田マハ |
いずれも入試前年に発表された作品が採用されている点は注目です。特に2016年から2017年にかけては、「小説現代」や「小説すばる」といった文芸雑誌に掲載されている作品から採用されていることにも注目です。
大問3(論説文)編
年度 | タイトル | ジャンル | 筆者 |
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2012 | 科学コミュニケーション | 科学 | 岸田一隆 |
2013 | 動的平衡2 | テクノロジー・経済 | 福岡伸一 |
2014 | 哲学のヒント | 言語論 | 藤田正勝 |
2015 | 音楽の聴き方 | 文化・芸術 | 岡田暁生 |
2016 | ヒトはなぜヒトになったか | 自然科学 | 長谷川眞理子 |
2017 | 大人になるためのリベラルアーツ | 教養・教育 | 石井 洋二郎・藤垣 裕子 |
2018 | 美と実在 | 芸術 | 佐藤透 |
2012~2013年は青山学院、2014~2015年は京都大学、2017年は東京大学、2018年は東北大学といった具合に、大学教授による論文、特に科学分野と芸術分野に関するテーマの出典が多数を占めています。
大問4(古典)編
年度 | タイトル | ジャンル | 成立時代 |
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2012 | 平家物語 | 軍記物語 | 鎌倉時代 |
2013 | 十訓抄 | 説話 | 鎌倉時代 |
2014 | 俊頼髄脳 | 歌論 | 平安時代 |
2015 | 古今著聞集 | 説話 | 鎌倉時代 |
2016 | 浮世物語 | 物語 | 江戸時代 |
2017 | 御伽草子集 | 物語 | 鎌倉~江戸時代 |
2018 | 徒然草 | 随筆 | 鎌倉~室町時代 |
比較的様々なジャンルから出題されていますが、比較的鎌倉時代に成立した作品や、物語、説話に分類されるものが多くなっています。
特に今年は改元という大きなトピックスがあり、またその出典が万葉集だったということも相まって、詩歌にまつわる作品が採用される可能性は想定しておきたいところです。
かつて、ある識者はこういった言葉を残しています。「文字で心を洗い、その心のノミで顔を彫る」。それだけ読書は心を豊かにし、人間性を豊かにするものだと言うことでしょう。入試に限らず、有意義な人生を実現するためにも、この秋、“読書の秋”に努めてみてはいかがでしょうか。