編集長コラムvol.39 AI教材会社の塾参入に思う塾の存在意義

AI教材で急成長中のatama plus社が、2022年6月1日より長野県松本市の2教室でAI教材「atama+(アタマプラス)」を使った学びを提供する学習塾「THINX(シンクス)」の運営を開始し、小学校高学年と中高生を対象とした生徒募集を行うというニュースが飛び込んできました。

「atama+」はAIが生徒の理解度やペースをもとに、一人ひとりに合わせた専用カリキュラムを設計し提供するAI教材で、実は筆者が塾長を務める個別指導「こだわり」塾でも導入を検討したことがあるという経緯もあり(結果導入を見送りましたが)、今回のニュースには注目すると同時に、塾の存在意義というものを改めて再考するきっかけとなりました。

というのも、多くの方がご存知・・・場合によってはご利用中の通り、既にAI学習コンテンツの類は巷にあふれていますし、そこにYoutubeなども含めれば、何も塾に通わずとも優れた教育機会を得ることは以前と比較にならないほど容易になっています。にも関わらず、当のAI教材開発会社が、塾業界進出の目的として「シンクスを通じてatama+のプロダクトやコンテンツの改善と、それを活用する教室の運営モデルの開発を目指す」と位置付けていることに、やはり対面、あるいは切磋琢磨できるリアルな場が持つ意味の大きさを実感せざるを得ないのです。

事実、はや3年目に突入しているコロナ禍においても、以前と大きくは変わらぬペースで入塾希望のお問い合わせを頂いていますし、日々授業や自習に来塾される生徒さんの存在も変わりない光景となっています。

もちろん、AIには人を凌駕するほどの優れた解析能力がありますし、提供サービスにはデータという裏付けも伴います。Youtubeに登場するような名物講師の方々も、このManavoでそのコンテンツをご紹介したこともあるほどに、優れた指導を展開されている方が多くいます。

一方で、人間だからこそ、対面の、肌で感じる部分こそが課題の急所を突けるということもありますし、他にも塾というリアルな場だからこそ得られる学習機会や価値は数多く存在します。

つくづく、手軽に様々なコンテンツに触れられる時代だからこそ、用途や相性、個々の事情に応じた“使い分け力”の要求されることを実感する日々です。