編集長コラムvol.2 効率を追求しないで欲しいこと

昨今の情報化社会の影響なのか、あるいはその一環で各種のハウツー本の類が出回るようになった影響なのか、いずれにしても、「効率的に」という考えや発言の類が、生徒や保護者、あるいは塾講師からも頻繁に聞かれるようになりました。

ただ、誤解を恐れずに言えば、筆者は「効率的に」という言葉は好きではありません。

勉強に限らずスポーツでも何でもそうですが、一見して地道で遠回りに見える非効率的な手数こそが、得てして結果的に一番効率的なアプローチだったりするものです。

Manavoを運営する個別指導「こだわり」塾での学習指導、進路指導の現場でもそれらは日々痛切に実感していることで、例えば高偏差値帯や高伸び率の生徒ほど、地道な基礎演習を大切にしていたり、解説の読み込みといった1問当たりにかける手数が多かったりします。

そこで今回は、教育現場に身を置く者として、あえて「効率を追及しないで欲しい」と声を上げてお伝えしたいことを3つ、ご紹介させていただきます。

演習編 解くことよりもむしろプロセスを大切に

試験などの本番においては、どれだけ正しい解答を導き出せたかの1点を評価されがちですが、日々の練習においては、むしろそこに至るプロセスを重視することこそが本番で得点する上では重要だったりします。
例えば教科書や参考書に載っている問題と全く同じ問題が試験本番に出ることは奇跡に近い確率でしょう。つまり、本番につながる学習をしようと思えば、解くこと以上に解き方や考え方を理解し使えるようにすることの方がはるかに大切な要素なのです。
例えば数学で途中式をちゃんと書く、国語の読解時に回答根拠等に印をつける、理社で用語だけでなく実験や資料をちゃんとまとめる、科目問わず正誤問わず解説をきちんと読み込む等々、地味で面倒で端折りがちなことこそ大切にしておかないと、本番で力を発揮することは難しくなってきます。

暗記編 得やすいものは失いやすい

脳科学の観点からも、記憶に残りやすい事象には「印象が強烈なもの」「重要であると認識したもの」そして「反復性」というポイントがあります。
勉強において印象の強烈さを求めるのは酷な面もあるでしょうし、勉強である以上その重要度は共通です。そうなると反復性、つまりは何度も手数をかけるしかないということになります。
例えば英単語や漢字を何度も書いて覚えるという手法は、一見古典的で非効率的な作業のようにも思えますが、何度も覚えなおす手間や、いざ試験本番で実際に思い出せなければ意味がないということを思えば、実は一番手堅く、効率的な手法だと言えるでしょう。

志望校選び編 ネットの情報は“タダ”の情報

こう書いてしまうと当サイトの編集長として立つ瀬がないですが、ネットに出回っている情報はあくまでも無料、つまりタダの情報であり、その内容は概要レベルに留まったり他人の価値感に基づくものばかりです。
例えば進学実績やカリキュラム、授業料など明確な軸を持って比較検討しやすい情報の収集であればネットの方がむしろ効率的ですが、それ以外の校風や通学の利便性等、個々の価値感に依存する割合の大きな部分は、やはり自分の足で確かめないと後悔のもとになりかねません。

効率性の高低に関わらず、成果を出して欲しいという本質的な部分で願うところは同じです。かけるべき手間はかけ、そして便利なものはとことん活用し、有意義な学生生活を過ごして欲しいと思います。