令和4年度入試、想定しておくべき傾向の変化

新学習指導要領の適用、共通テスト導入の影響等、今年度も入試戦線に置いて念頭に置いておくべきトピックスが盛りだくさんです。もとより全国的にも比較的先進的な取り組みを見せてきた埼玉の公立高校受験戦線において、近年は新傾向とも呼ぶべき出題が続いてきました。

では、新傾向である以上打つ手はなく、ふたを開けてみるまで分からない手探りな状態で臨まざるを得ないのでしょうか?

実は、新傾向と言いつつも、どういった方向性を向いているのかの傾向は明確にあります。

ここでは過去の平均点の推移も踏まえつつ、どういった得点戦略を持って備えていくべきかを考えてみましょう。

数学

学力検査問題
2019年 2020年 2021年
42.3 67.9 62.2
学校選択問題
2019年 2020年 2021年
53.5 55.2 56.0
  • 学力検査問題では大問1の小問集合65点分!
  • 関数&図形分野で約60点
  • 立体図形が定番化
  • 学校選択問題において、学力検査問題と完全一致は17点分と年々減少傾向(昨年度は29点分)
平均点の推移をみても明らかなように、特に学力検査組の平均点は、ほぼそのまま“大問1の配点”と前後しており、この取るべき基本問題をどれだけ着実に得点できるかが、まずは第一に優先すべき対策と言えます。

特に近年は関数や図形分野の配点が高まっています。昨年はコロナ禍の影響で「円周角」「三平方の定理」等が出題範囲から除外されましたが、今年は復活濃厚ですので、公式や定理類の暗記はもちろん、幅広く様々な演習に触れることで経験値を高めることも、有効な対策の一つです。

さらに今年は新学習指導要領が適用された背景から、特に強化分野である「データ」関係は警戒が必要です。1年時の「データの活用」、2年時の「箱ひげ図」などは必ず押さえておきましょう。

また、特に選択問題に関しては、学力検査問題との共通問題が年々減少し全く別物の問題と化していることと、加えて関数や図形分野でも図が与えられない形式の出題が増えています。問題文を読み解き、情報を図示する力の重要性が年々高まっていると心得ておきましょう。

英語

学力検査問題
2019年 2020年 2021年
47.7 52.2 51.4
学校選択問題
2019年 2020年 2021年
64.3 58.9 61.6
  • 英答問題が増加傾向
  • 学校選択問題では配点の6割以上が記述形式
  • 長文や英作文のテーマとしてSDGs関係が頻出。背景知識の有無で体感的な難易度は変わる為、時事的な素養の蓄積も必須。
リスニングが英問形式になり、長文でもグラフが挿入されるなど読解力重視の方向性が強まり、さらには記述問題が配点の6割以上を占めるなど、新学習指導要領における4技能重視の観点で改革の進む英語ですが、本質的に文法問題中心の出題傾向は変わりません。

つまり、ただ読めれば良いというものではなく、語法を含め、ちゃんと文法事項を理解することが、特に記述問題の配点が増加傾向にある中では最も重要なポイントとなります。

なお、今年から始まった共通テストでは、去年までのセンター試験比で約3割も文章量が増加しました。その影響で、長文問題の更なる長文化も想定されるため、特に選択問題組は上位私立の過去問なども活用し、長文慣れをしておけば憂いが軽減されるのではないでしょうか。

国語

2019年 2020年 2021年
58.3 57.2 68.7
  • 大問構成は安定傾向も、引き続き膨大な文章量。
  • 記述で約40点。要約力の養成が必須。
  • 作文の配点が16⇒12点に減少も、依然として全科目中最大配点と重要性は不変。
出題傾向に特に大きな変更はないものの、例年安定して相当な文字数で出題されるため、速読力と精読力をいかに両立するかというのは、不変のテーマと言えます。

また、作文以外にも40字程度の記述問題も複数題出題されることが定番になっており、上述の通り、早く正確に読み取り、加えてその内容を要約する練習を重ねていくことが、高得点できるかどうかのポイントになってきます。

理科・社会

理科
2019年 2020年 2021年
44.5 51.1 56.2
社会
2019年 2020年 2021年
60.3 55.4 62.6
  • 特に理科は2019年から資料が激増。一問一答的な知識の詰込みでは対応困難に。
  • 時事関係、特にSDGs関連(環境や途上国支援等)や新指導要領関連(防災や多様性等)に関するテーマは要チェック。
  • 「完答で正解」「組み合わせを選ぶ」等、正確な知識の定着を問う問題も増加傾向。
両科目とも年々資料量が増加傾向にあり、また結論ではなく過程を説明させる問題など、安易な一問一答形式への備えだけでは得点しづらい状況になってきています。

特に理科は実験を通じて何が分かるのかといった本質的理解度が問われるようになっていますし、社会では地歴公民の単元を超えた総合問題も出題が定番化しています。

正確な知識の定着は大前提として、理科の実験、社会の資料の読み取りといった、より本質的な学力の養成が高得点のポイントです。