編集コラムvol.33 模試を受けることの見逃せない意義

本稿公開時点で、すでに2学期の期末テストも終了し、年内に残す試験類は第7回北辰テストのみという状況になりました。

公立高校志望者や確約制度の無い附属高校志望者は、ここからいよいよ追い込みの時期に入っていきますが、一方で多くの私立高校志望者にとっては、12/5に控える第7回北辰が、志望校突破に向けて実質的に最後の大一番となります。

にも関わらず、ここ数年、「?」と感じざるを得ない傾向が生じ始めています。

第7回北辰テストを“受験しない”という選択を取る生徒の増加です。

もちろん、既に志望校の確約を取ってしまったという方もいるでしょうし、相性面などを考慮して定期テストに全集中という方もいるでしょう。無料ではない模試だけに、受験するかどうかは各ご家庭の様々な価値観によるものの、それでも模試を単なる偏差値測定、志望校合格判定、あるいは確約取得手段として位置付けているのであれば、長期的視点に立った時にデメリットへの不安も禁じえません。

では、上記のように一定の目標を達成したり、あるいは戦略的観点から他の手段に集中することを決めているにも関わらず、それでも模試を受験することにどんな意義があるのでしょうか?

①受験生であることの自覚と緊張感を維持する

受験のゴールは確かに志望校合格です。ただ、高校進学をゴールと捉えるご家庭は確実に減っており、現に大学進学率は5割超、専門学校などへの進学も含めれば、高校卒業後に即社会に出ていく方がもはや少数派です。

つまり、志望校合格を確実なものにしてもなお、その後も学習を継続する、より本質的に言えば努力し続けるべき時間は続くのです。

筆者が塾長を務める個別指導「こだわり」塾のOB・OGを見ても、進学後に苦労する子の特徴の一つに「私立単願」「年内の早い時期に確約取得」「模試を早い段階で受けなくなる」「受験終了後(主に1月)に即退塾」といった共通項があります。

惰性でゴールするのではなく、ゴールを目指して走り続け、そしてゴールまでしっかり走り抜ける。そういったスタンスの有無が、春以降も“受験経験”をしっかり活かし、成長を続けられるかどうかの大きなポイントになってくるのでしょう。

そういう観点に立てば、安心が油断や妥協に変わることなく、受験生であることの自覚や緊張感を維持する上で、指針たる成績表も得られる模試の受験は、単なる偏差値測定機会以上の大きな意義があるのではないでしょうか。

②常に上を目指し続けて努力を継続する機会になる

一昔前と異なり、今や私立高校には成績に応じた複数のコースが設定されているケースが目立ちます。つまり、その高校に合格できるかどうかだけでなく、その高校のどのコースに合格できるかどうかも重要なポイントになっているわけです。

転じて、早期の確約取得に伴って模試を受けることも無くなる方の多くは、実はまだ上のコースがあるにも関わらず現状で妥協してしまっているケースも非常に目立ちます。

上記の①にも関連しますが、そういった状況に甘んじる方の多くは総じて伸び悩みます。

緊張感を持続したり、より高みを目指し続けることも春以降に大きな差が生じる要因になってきますし、現に早々と確約取得で実質的に受験勉強を終えてしまった方よりも、公立志望を目指して3月まで受験勉強を続けていた方の方が、進学後に比較的上位のポジションでスタートされる傾向もあります。

結果的により上位のコースに合格がかなうかどうかももちろんですが、それ以上に、常に上昇志向を持って努力を継続する契機と捉えれば、模試を受験し続けることの効用も見逃せないものになります。

※筆者は決して北辰の回し者ではございません(笑)