2017年、一部の上位校向けに「学校選択問題」が導入され、特に数学において、受験者層を思えば信じ難い平均点の低さに衝撃が走りました。
さらに翌2018年、川口市立の3校が統合され、新たに川口市立高校が新設されると、およそ公立高校とは思えない最新の設備と、前年の学校選択問題の難易度に対する嫌気も相まって多くの志願者を集め、結果的に合格難易度の上昇、そして多くの波乱が起きました。
以降、特に偏差値60前後に位置する公立高校志望者にとっては、川口北や蕨にチャレンジするのか川口市立にするのか、あるいはそれ以外にするのか、頭を悩まされることになってきました。
そしてさらに、事態が混迷することになったのが、昨年度からの川口市立の選択問題採用です。
選択問題を避けた場合にどの学校にするのかという観点もそうですが、やはり本質的に選択問題の難易度が相当に高いことから、従来川口北や蕨を受験していた層が、川口市立と秤にかける動きが加速したのです。
ただ、結論から言えば、川口北でも蕨でも、あるいは川口市立でも、戦略として取るべき部分に大きな違いはなく、純粋に内申点や偏差値を参照しながら志望する高校を受験すれば良いというのが、筆者の意見です。
学校選択問題は本当に“ムリゲー”な難易度なのか?
数学 | ||||
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|
43.2 | 43.7 | 53.5 | 55.2 | 56.0 |
英語 | ||||
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|
71.9 | 58.9 | 64.3 | 58.9 | 61.6 |
上記は選択問題導入以降の平均点の推移です。導入当時、特に衝撃的だったのは数学の難易度です。
上は御三家(偏差値70前後)、当時最も難易度的には下に位置していた川口北でも偏差値60以上は必須なレベル帯の受験者群にも関わらず、平均点が50点にも及ばないどころか、60点以上得点できたのがわずか9%しかいなかったのです。
以降、少しずつ対策も立てられるようになり、当時よりは平均点も上昇傾向ですが、それでも50点をようやく超える程度ですから、その難易度は推し量れます。
ただ、上位大附属高を志望して対策していたような層や御三家受験者層ならともかく、偏差値で言えば60台前半に位置する層の得点力で言えば、50点取るのが至難なのは誰しも同じなのが実情です。
つまり、高得点しなければならないという緊張感よりも、いかに手堅く確実に取れるものを取り切れるかという考え方の方が戦略的思考としてははるかに重要で、そういった観点で考えれば、対応すべき問題やその難易度も取捨選択すべきですし、“合格するための対策”としては必ずしも敬遠するほどの難易度ではないのです。
むしろ考慮すべきなのは英語や他科目で、平均点の高止まりする英語や、もとより高得点争いになりがちな共通問題の国理社で後れを取らないような準備ができるかどうかこそが、チャレンジすべきか否かの判断材料としては重要だと言えるでしょう。
川口市立の高倍率は高難易度を意味するのか?
高校 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
蕨 (普通科) |
競争率 | 1.59倍 | 1.16倍 | 1.47倍 | 1.48倍 | 1.36倍 |
---|---|---|---|---|---|---|
目安偏差値 | 65 | 65 | 65 | 65 | 66 | |
目安内申点 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 |
高校 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
川口北 | 競争率 | 1.21倍 | 1.42倍 | 1.27倍 | 1.39倍 | 1.05倍 |
---|---|---|---|---|---|---|
目安偏差値 | 63 | 63 | 62 | 62 | 61 | |
目安内申点 | 37 | 38 | 38 | 38 | 37 |
高校 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
川口市立 (普通科) (2018~新校) |
競争率 | 1.48倍 | 1.58倍 | 1.51倍 | 1.2倍 | 1.73倍 |
---|---|---|---|---|---|---|
目安偏差値 | 56 | 60 | 60 | 60 | 60 | |
目安内申点 | 35 | 36 | 37 | 36 | 36 |
冒頭でも触れた通り、選択問題を敬遠する動きと川口市立新設のタイミングが絶妙に合致したことで、2018年からは特に川口市立の人気が沸騰する事態となりました。
数字を見てもその傾向は明らかで、川口市立は統合前の旧市立川口と比較しても、競争率、偏差値、内申点、いずれも大きく上昇しています。
ただ、導入&新設から4年が経過し、そうしたバブル的なブームや他校への影響も落ち着きを見せています。
また、川口市立が選択問題組に回ってきたことで、川口北や蕨等を志望している受験生群があえて選択問題を回避する理由が一つ減り、ある意味では序列が一層固定化する要因になっていくのではと思えるほどです。
難易度的に近いところにある川口北と川口市立のポジション争いが今後も続くことは想定されますが、見かけの競争率に振り回されるのではなく、自らの内申点や偏差値(得点力)をもとに冷静に合否の可能性を見極める判断力こそが、結果を分かつと言えるでしょう。
学校選択問題も、導入から4年が過ぎ、当時に比較すれば随分と対策を立てやすくなりました。また、川口市立も1期生が大学進学を終えたこともあり、その実績も考慮して一層冷静なジャッジが下されるようになるでしょう。
大切なのは、目安となる基準と自身の点数を冷静に見極める判断力と、絶対にそこに行きたいという情熱、そしてそれを行動に移す努力です。
それらの視点を持って、現時点の数字に振り回されずに大いに夢と希望を持って、秋以降の受験シーズンを突き進むようにしてください。