2020年に小学校で指導要領改訂が全面実施されたのを皮切りに、今年度からは中学校でも新たな取組みが始まりました。
「ゆとり」「脱ゆとり」に象徴されるように、日本でも度々教育のあり方について議論され、そして様々に模索されてきましたが、世界に目を向ければ、もっと思い切った取り組みも見られます。何が正しいかはさておき、果たして世界のスタンダードは今どこにあるのか、見ていきましょう。
世界トップクラスの学力!フィンランドの教育制度とは?
OECD加盟国による、15歳生徒の学習到達度調査(PISA)において、常に高評価を獲得し続けるフィンランド。その教育事情は、日本でも模範とすべき理想のあり方としてよく話題になります。どちらかと言えば、のんびり穏やかな姿をイメージしがちなフィンランドの教育ですが、その特徴としては、「機会の平等」と「自主性の尊重」を理念に掲げた個別教育のケアが充実していることが挙げられます。
子供たちを「人財」と考えているフィンランドでは、国の教育政策として子供達一人一人を手厚く保護していて、日本でいう小学校、中学校、高校、大学または専門学校までの授業料を、なんと全て無料にしています。そうすることによって、みんなに平等に勉強できる環境を与えているのです。
さらに、1クラス20人前後と少人数制で授業が行われ、勉強が苦手な子には補習なども行われ、特別学力の低い子ができないような教育システムができています。そのため、学校内はもちろん、学校間にも学力の差が少なく、国内全体で一定の学力維持を実現できています。
日本では、世帯年収が子どもの学力に大きく影響していることがニュースになるなど、その格差を問題視する声もありますが、フィンランドは「機会の平等」を実現することで、現実として高度な学力水準を維持できていることは興味深い現象と言えるでしょう。
ただし、安心感だけではなく緊張感もしっかり付与しなければ、これだけの成果は得難いはず。実はフィンランドでは、義務教育段階で留年制度が導入されています。日本ではどんなにテストの点数が悪くとも、中学までは進級・進学が可能なシステムですが、そういった面ではフィンランドは非常に厳しいシステムとも言えるでしょう。
ちなみにフィンランドの年間授業日数は日本と比べて約40日も少なく、宿題やテストの類も日本ほどありません。また、日本の塾のような存在もないそうです。ところが読書量は世界一という統計もあります。ここに「自主性の尊重」という理念の一つの形も伺えます。
フィンランドの人口は約600万人ほど。しかし、世界でも有数の教育レベル、幸福度、福祉を備えた国として認知され、国際経済競争力に関しては、5年連続1位を獲得しています。
その背景として、これらの教育制度が大きく貢献しているのは疑いようがありません。
日本の常識は世界の非常識!?他にも様々な教育制度が
アメリカの教育で特徴的なのは、フィンランドと同様に義務教育段階で留年があるということです。一方で、進級についての年齢制限がないため、いわゆる「飛び級」で学んでいる生徒もいます。個々の理解度に合わせて、たとえ同じ年齢でも受ける授業が異なる可能性があるのです。
このあたりが、集団の和を重んじ、良くも悪くも「横並び」と称される日本の教育との大きな違い。アメリカでは教育制度においても個人主義の精神が尊重されているといえます。
また、日本では多くの生徒が通っている塾があまり普及しておらず、その分、学校からの宿題が多くなっているそうです。このほか、高等学校の段階から、生徒の興味や関心、希望する進路に応じて非常に多くの講座から授業を選択できるようになっているのもアメリカの教育制度の特徴です。
この他にも、世界にはユニークな特徴が様々に見られます。小学校生活といえば、給食もいまや立派な「食育」として位置づけられる重要な教育機会です。その給食について「らしい」取り組みのなされているのがイギリスです。ある小学校のメニューには、ハンバーガーやサラダなどと並んで、「ベジタリアン」というメニューがあるそうです。これは肉が嫌いな子だけでなく、肉を食べない家庭の子どものために作られたもので、こうした食文化への多様性を認めるのも日本とは異なる風景の一つです。
また、グローバル化の進んだ現在、日本でも小学校から英語教育が始まるなど、外国語教育は重要な柱の一つですが、多民族国家では母国語+1では足りないという国も。なんとオランダでは、公用語のオランダ語のほかに、英語、ドイツ語、フランス語を勉強しており、3~4カ国話せる人も珍しくありません。
こうして見ると、日本はもしかするとまだまだ教育後進国なのでは・・・。そんな危機感を禁じ得ませんね。