小学校で既に英語が教科化されていることについては、これまでにも度々触れてきましたが、では具体的に、今の小学生たちはどういった内容の英語を学習しているのでしょうか。その一例を見てみましょう。
これは実際に小6のテキストの内容ですが、これらの文章を読めるか否かはもちろん、ここに含まれる文法事項という観点で見れば、その内容の高度さは既に従来の中2レベルですし、さらに中学進学後どういった内容に触れることになるのかも察しがつくでしょう。
学習時期が従来より前倒しに!文法レベルは“超”中学レベルに!?
具体的には、新教科書では中1の1学期想定の段階で既に「不定詞」「動名詞」などの内容が登場しますが、これらは従来は中2の2学期で学習していた内容で、しかも苦戦する子の非常に多い高難易度な事項です。
さらには高校生でも苦手にする子の多い「仮定法」「現在完了進行形」など従来高校で学習してきた事項も、一部中学での学習内容として移行してきます。
学習して何十年という保護者世代からすればピンと来ない部分もあるでしょうが、端的に言えば、小学校5年生から、つまり従来より学習開始時期が2年分早まったことで、中学での学習内容も相応に難易度が高まってくると考えれば、危機感を禁じ得ないのではないでしょうか。
また、新教科書では会話表現などの英会話的素養についての内容に偏重していることも懸念すべき点の一つです。つまり、知っているかどうかに依存する部分が増えるということは、初見の問題に際して文法的視点から思考するという概念が疎かになり、テストや受験においての英語の得点力が培われにくくなる可能性があるのです。
既にふれたように、高度な文法事項に触れることになるにも関わらず、その理解や習得の機会は「塾に丸投げ」という事態にもなりかねない。これも留意すべき不安要素の一つです。
変化するのは文法のみにあらず!学習する語彙数も2倍以上に!?
難化するのは文法事項だけではありません。取り扱う語句の数に関しては文法事項以上の衝撃的な内容になっているのです。
従来、川口市の中学校で採用されてきた教科書では、中学3年間で約1300語の語句を学ぶことになっていました。
それが新教科書においては、小学校で既に約600語もの語句に触れている前提の上で、加えて中1で約1000語、中2で約600語、中3で約650語、合計すると中学卒業段階で2900語近くという、これまでの2倍以上にもなる大量の語句を学ぶことになっているのです。
これだけ語句数が増えると、その中身も英検2級(高校卒業程度)レベルのものも含まれてくるなど、相当な難易度になってきますし、シンプルに「覚えるべき知識量が2倍以上になる」と考えるだけでも、子どもたちの負担感は大変なものになります。
そもそも中学校に進学した段階で約600語、つまり従来の中2の半ばまでに学習していた語句数を、既に学習済みという前提で中学校での英語がスタートするわけですから、中学校1年生の1学期の中間テストという、これまでであれば単語テストの延長のような点取り合戦になりやすいテストというものは期待しづらく、いきなりの二極化が顕在化しても何の不思議もありません。
もちろん、中学在籍途中にして、これほどまでに大きな変化の中に放り込まれる新中2、新中3でも同様に混乱の生じる可能性は否めません。(受験に関しては何らかの処置がとられる可能性もありますが)
新指導要領適用に伴う最大の波乱の芽は、英語にあると言って過言ではないのです。