編集長コラムvol.21 来春改訂!中学新教科書の所感

受験戦線もいよいよ熱を帯びてくる時期ですが、一方で新年の足音も近づいてくる時期です。

さて、来る2021年は、中学でも新指導要領が適用され、つまり新たな教科書に基づいて授業が進められる初年度になります。

実はこの時期になると、新教科書やそれに適応した新たな塾向け教材に触れる機会も出てくるのですが、やはり事前に把握していた新単元や再編内容も含め、相当にインパクトのある改革元年となりそうなことに、危機感を拭えません。

特に来年受験生となる現在の中2世代は、改革初年度に受験を迎え、さらに3年後には新テキストに基づく共通テスト1年目の世代になります。つまり、節目節目で初見のテストに向き合うことになるため、相応の覚悟や準備が必要になってくるのです。

ではここで、改めてどういった観点で新指導要領に向き合っていくべきか、考えてみましょう。

英語がヤバい・・・

まず改革の旗頭とも言うべき科目なのが英語です。すでに2020年度から小学校高学年で科目化され、その内容も従来中学で扱っていた文法事項が一部含まれるなど、一気に英語学習の早期化が進むきっかけになりましたが、その流れを受けて、中学での学習内容も大きく変わります。

象徴的なのが、学習する語彙量の増加です。

これまでは、中学3年間で学習する語彙数は約1200~1300語でした(教科書によって異なる)。それが、科目化された小学校段階で既に約600語。加えて、2021年度から川口市で新たに採用される新教科書では、中学3年間でなんと約2300語もの語彙を学ぶことになります。つまり、中学修了段階で約2900語、これはこれまでの倍以上ものとてつもない量になります。

さらに文法面でも、これまで高校で扱っていた事項が一部中学に移行したり、学習時期が再編されたりします。あまりにも急激な変化に中学生たちはもちろんのこと、肝心の現場レベルでも混乱必死。間違いなく、ついて行ける子とそうでない子の二極化は一層顕著なものになるでしょう。

問題文が長文化

英語ほど極端なものではないにしろ、他の科目でも同様に大きな変化は認められます。その一つの特徴が「より実生活に即した内容」への変化です。

そして、それによって何が起きるかと言えば、解説の対話文化や、前提条件の複雑化に伴う問題文の長文化です。

つまり、例えば理系科目であれば、公式や定理の類を押さえ、それに基づいて数字を当てはめて・・・といった安易な構造では対応できなくなり、問題文をしっかり読み解き、何を言わんとしているのか、あるいは何を問うているのかをしっかり理解する読解力と想像力が、前提として求められるようになるのです。

そういった点では、国語という案外疎かにされがちな基幹科目の重要性が、これまで以上にクローズアップされるようになるかもしれません。


現段階では来春以降、どういった運用がなされるのか、あるいはどういった現象が生じるのか、まだ憶測の域は出ません。しかし、相当の危機感や覚悟、もっと言えば準備ができていなければ、結果的に翻弄されるのは子供たちです。

また、来春中学で新教科書が導入されるという短期的なイベント的観点だけでなく、さらにその3年後には、新教科書=新指導要領に基づいて初めて行われる共通テスト世代にもなってくるという長期的視点で見れば、一層考えるべきことは増えてきます。

大切な子供たちの未来を巡る攻防は、既に始まっていると言って過言ではないでしょう。