編集長コラムvol.19 公立出題範囲削減で懸念する3年後の格差

9月も残すところあと少し、秋の気配も漂い始めていますが、同時に、公立に加え私立高校の募集要項もほぼ出揃ってきました。ここからは、各自の成果と各校の目安基準を照らし合わせながら、志望校像をより具体化していくことになっていきます。

そんな中で、今年はコロナ禍の影響もあり、公立高校で一部出題範囲の見直しが発表されたことについては周知のとおりですが、私立はとなると、各校独自のスタンスを示してきているというのが実情です。

編集長コラムvol.17 公立出題範囲削減で考えるべきこと

ただ、そういった中にも一つの傾向はあり、附属高校群に加え、ある程度進学に熱心な私立に関しても「公立の出題範囲見直しには準じない」といったスタンスを示すところが多く見られるのです。

ここで懸念すべきなのが、志望校に応じて対策すべき範囲が異なることに加え、それに伴い、高校進学段階で特定の単元における学習習熟度に差が生じ、ひいてはその先の大学受験まで色濃く影響が残るのではということです。

特に英数の削除対象単元は、いずれも高校でも超重要単元

公立志望者が、削除対象の単元にどこまで熱心に取り組めるかというそもそも論にもなってきますが、中学校ごとに進捗に差はあれども、いずれにしても教科書的には最終盤に位置するところに登場する単元が削除対象となってきます。

それらに取り組むことになるのが1月なのか2月なのか、いずれにしても、いよいよ本番も差し迫ってくる状況下において、入試に出題されないと分かっていてもなお真剣に授業に耳を傾けられる生徒がどれほどいるでしょうか。そこに関して、少なくとも悲観的な観測は持っておくべきでしょう。

さらに問題なのは、特に英語の関係代名詞や数学の三平方の定理など、いずれも高校で学ぶ内容においても超重要な基礎となる単元であり、一方で中学で学習する事項としては比較的難解な事項となってくることです。

つまり、十分に理解できているとは言い難い状況で高校に進学すれば、高校在学中は言うまでもなく、ゆくゆく大学受験を考えた時に、きちんとやっていた層とそうでない層で、大きな格差の温床になりかねないのです。

今回の公立における出題範囲削除と、一方でそれに準じない方針を示した私立の、それぞれの進学者の3年後を思えば由々しき問題と言えるでしょう。

もちろん受験は受験、授業は授業として真面目に取り組む層もいるでしょうし、進学先におけるフォローもあることとは思いますが、環境や目下の課題に翻弄されやすい年頃の生徒たちの中で、どこまで理性を保って取り組める子がいるかと考えれば、不安は大きくなります。

私立と公立の格差拡大の更なる契機に!?

今回の一連のコロナ禍においては、公立と私立とでその対応に大きな差が生じました。そうでなくとも、特に上位大学合格者に占める私立出身者の割合は公立を圧倒しています。

諸々不公平のないようにという配慮の行く先が、結果として格差なのであればこれ以上ない皮肉ですし、看過できない懸念点です。

特に公立志望者は、こういった課題も踏まえた学業への取り組み方、受験勉強への臨み方も、例年以上に考えさせられる受験シーズンとなるでしょう。