今、子ども達の読解力が低下している!?

問題
「Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性名のAlexanderの愛称でもある」
 
【問】
上の文章において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適切なものを、選択肢から一つ選びなさい。
 
『Alexandraの愛称は(   )である』
 
(1)Alex

(2)Alexander

(3)男性

(4)女性

この例題の正解はもちろん(1)です。多くの方にとっては、「これ、問題になってる?」と感じられることでしょうが、なんと中学生の正答率は38%、高校生でも正答率は65%にとどまったそうです。この驚くべき結果からは、「子ども達の読解力が低下している」という結論を導かざるを得ないように感じます。

読解力が低下すると、様々な問題が起こります。例えば定期テストや受験を想像してください。試験問題はもちろん日本語で作られます。読解力が不足していると、問題の意図を読み取れず、教科に関わらず点数が伸びにくくなります。事実、読解力と各教科の偏差値に相関関係があることが、データからも示されています。

なぜ、読解力が低下しているのか?

では、なぜ子ども達の読解力は低下してしまったのでしょうか?背景の一つに考えられているのが、インターネットやスマートフォンの普及です。キーワードの入力一つで、自分に必要な情報だけをほぼ一方通行で簡単に取得できるようになったことの代償として、対象に直接関係のない事柄に触れる機会が減ってきています。また、検索すれば簡単に回答を得られることで、思考するプロセスが省略されてしまう弊害もあります。さらも、インターネット環境が身近になったことで、それに触れる時間も長時間化しています。今も昔も1日は24時間です。インターネットを使う時間が増えれば増えるほど、書物に触れる時間や思考する時間は削られていきます。

加えて、家庭環境の変化も一因に挙げられます。近年は核家族化が進行し、共働き家庭も増加し、親が子どもの教育に関われる時間が減っています。そのことが子どもの読解力低下に影響していると同志社大学の白川教授も示していますが、いかにして解決していくべきか、子どもの将来を思えば、大きな課題と言えるでしょう。

いかにして読解力を高めるか

人が何かを習得するには、魔法でもない限り時間と手間をかけるしかありません。読解力についても同様です。先ほど述べた、失われた時間を意識して確保し、多くの文章に定期的に触れる必要があります。

その上で、具体的に読解力を支える要素として挙げられるのが「語彙力」です。言葉を知らなければ、文章の内容を理解することは到底不可能です。ただし、語彙力は一朝一夕に身につくものではありません。まずはたくさんの文章を読んで、たくさんの語彙に触れましょう。そしてわざわざ手間をかけて紙の辞書を引くことも、記憶の粘着力を高める効果があり、大切なポイントです。

加えて重要な要素が「要約力」です。文章の要点をつかんで分かりやすくまとめる力のことですが、文字面を追って理解したつもりになるのではなく、自分の頭で整理して内容を理解する力とも言えます。この力を鍛えるには、それぞれの文章において、筆者の主張を一言でまとめる訓練をすると効果的です。

 

試験問題を解くにはテクニックさえ身につければ良いという考えもあります。しかし、試験を乗り切ることに目的を置くのか、より本質的な読解力を身につけて、先々まで確かな能力として活かしていくことに目的を置くのか、どちらがより有意義であるかは明白です。

新聞の社説を読んでみるといった比較的古くからある手法でも良いですし、目標を定めて読書習慣を身につけることでも良いでしょう。あるいは最近は各種のアプリも揃っており、ツールとしては幅広い選択肢があります。

まずは手軽なところから、読解力強化に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?