かつてManavo創刊号でも取り上げた子供たちの読解力低下問題。昨年12月には、OECD主催のPISA(国際学習到達度調査)の結果が発表され、「読解力分野」における日本の順位が過去最低の15位に低迷したことで話題になりました。
このPISAは、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「読解力」の3分野で行われていますが、今回話題になっている読解力以外の2分野も含め、これまでの推移を改めて確認しておきましょう。
調査年度(参加国数) | 数学的リテラシー | 科学的リテラシー | 読解力 |
2000年(31) | 1位 | 2位 | 8位 |
2003年(40) | 6位 | 2位 | 14位 |
2006年(57) | 10位 | 6位 | 15位 |
2009年(65) | 9位 | 5位 | 8位 |
2012年(65) | 7位 | 4位 | 4位 |
2015年(70) | 5位 | 2位 | 8位 |
2018年(78) | 6位 | 5位 | 15位 |
実は、過去にも日本の読解力の低さが話題になったことはありました。2003年の調査では、現在よりも参加国数が半分近かったにも関わらず、順位が14位と低迷し、PISAショックとも呼ばれ、文科省が「脱ゆとり」路線を本格化させるきっかけとなりました。
今回は当時より参加国数も多く、相対的な位置づけで考えれば順位そのものを当時と比較するのはナンセンスですし、順位が下がったとは言え得点(平均504点)自体はOECD平均(487点)を上回っています。とは言え、せっかく立て直しに成功・・・となりかけたところで、前回、今回と続けて順位を下げてしまった結果は受け止めねばなりません。
では、読解力のどこが問題なのか、PISAの読解力調査で何を測定しているのかをまずは確認してみましょう。
- テキストを読んで情報を検索する能力
- 理解する能力
- 評価し、熟考する能力
中でも今回平均得点を押し下げる要因になったのが、①と③でした。
特に全体的に顕著だった課題が「自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるよう記述できず、問題文からの語句の引用のみで説明が不十分な解答となるなどの傾向が見られる」という点です。
こうした傾向はManavoを運営する個別指導「こだわり」塾でも非常に強く感じられることで、語句の抜き出しならできても、自由記述や自分なりの表現を求められると、途端に脈絡を失ったり手が止まるというシーンは日常茶飯事なのです。
情報が手元に溢れるスマホ社会。
額面通りに受け取らず、何を感じるかが重要に!
ネット社会、さらにはSNSの影響か、「誰かがこう言っている」「●●でこう書いてあった」という主張は、何も日常のコミュニケーションに際してのみ見られる現象ではありません。
常日頃、様々なニュースや出来事に際して、自分なりに何を感じ、どういった意見を持つのか。そういった些細な日常を欠いているからこそ、演習に際していざ「自分の意見」を求められると、窮することになってしまうのでしょう。
一方で、今年から小・中・高と順次実施される改訂指導要領においては、思考力や論理力などを強化する方針が推し進められ、伴って記述力・表現力といった要素もますます求められるようになることが想定されます。
既に大学入試や高校入試では、そういった意向を汲んだ出題傾向が見られ始めています。単なる知識のインプットに終始したり、目の前に広がる現象や情報に対し丸腰で全てを受け入れてしまうスタンスでは、これからの受験にはとても対応できなくなっていきます。
改めて、読書量不足や語彙力不足だけでなく、ある意味ではさらに奥深くのより本質的な部分に、読解力不足の要因があるのではないかというのは直視すべき課題と言えるでしょう。