改訂指導要領完全実施!のんびりしてると取り残される!?注目すべき変更点

およそ10年ごとに改訂されてきた学習指導要領。その改訂版が、2020年からまずは小学校での全面実施を皮切りに、中学高校でも順次実施予定となっています。

すでに話題になっているプログラミング教育や英語改革など、トピックスとして認知されている事項もあるものの、その詳しいところはなかなか耳にする機会もないもの。

そこで、そのポイントを整理してみましょう。

理科地学分野に「自然の恵みと火山災害・地震災害・気象災害」を新たに追加

カテゴリ 科目 TOPIX
小学校 英語 中学年で週1コマの外国語活動を開始。高学年では科目化して週2コマの授業を実施。
中学年では「聞くこと」「話すこと」に軸足を置くが、高学年では「読むこと」「書くこと」の領域が追加。
助動詞や疑問詞、文構造など、文法的観点からの学習も取り入れ、中・高との連携を図る。
算数 現行6年生で扱う「量の単位」「割合」について、それぞれ3年生や4年生に移行。
中学校 英語 小学校の内に扱う約600語に加え、新たに1600語以上の語句を取り扱う。
「授業は英語で行うことを基本とする」と明文化されていることに象徴される通り、4技能の習得をより推進。
原形不定詞や仮定法など、現行では高校で取り扱う文法事項を一部中学に移行。
数学 「資料の活用」に、現行数Ⅰの内容を一部移行。
理科 「放射線の性質と利用」を新たに追加。
高校 数学 数Cの復活、および数Bにおいて「統計」分野の強化。

いよいよ小学校でも英語が教科化

大学入試改革における外部検定の活用(共通テストでは結局見送られましたが)にもみられるとおり、やはり最大の目玉は英語学習、それも小学校高学年における“教科化”でしょう。

これまでにも度々報じられてきたとおり、新学習指導要領における英語は、従来の知識・技能だけでなく、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を総合的に身につけようという内容になっています。

さらに、学習内容の“量”よりも“どう学ぶか”に力点を置いている背景もあり、一つの形式としてアクティブラーニングの要素を取り入れた“動画や音声を用いたコミュニケーション重視の内容”になっています。

文法重視の受験英語との間にどのようなギャップが生じてくるのか、一面的な評価はまだできませんが、少なくとも、これまで以上により主体的なスタンスが必要になることだけは確かでしょう。

もちろん、中学校や高校の学習内容への連携も配慮するようにとの一文もありますし、なによりその内容には、文構造などの文法的観点での指導も行う旨が明記されています。

これまではあくまでも「総合的な学習の時間」を減じる代わりに行う「外国語活動」の域を出なかったために、厳しい言い方をすれば幼児英会話のような楽しむ時間でしかありませんでした。

それが今後、十分なノウハウの蓄積もなければ、指導経験値的にも不安の拭えない小学校の現場でどう対応していくのか、そしてどう成績に反映されていくのか、まだまだ未知数です。

受験においても非常に重要な科目になってくるだけに、早期に後れを取ることがないよう、各家庭での対応も重要なポイントになってきそうです。

理数教育にもIT変革の波が!

算数や理科の教科書では、今回から新たに必修となるプログラミング教育が盛り込まれました。

もちろん小学校義務教育の段階から本格的なプログラマー育成を直接的に目指すものではなく、ITが社会に浸透し、不足しているIT人材の裾野を広げるきっかけになればとの思惑です。

プログラミング教育拡充の流れ
  • 小学校:2020年度から、算数と理科でプログラミング必修化
  • 中学校:2021年度から、技術・家庭科におけるプログラミング教育の内容拡充
  • 高校:2022年度から、プログラミングを含む「情報Ⅰ」を必修科目として新設

ただし、お隣の韓国では10年以上も前からプログラミング教育が本格化している他、欧米各国でも同様に以前から取り組んでいる国は多く存在し、日本の出遅れ感は否めません。

また、肝心の教師側に、十分な知識やスキルがあるのかという問題もありますし、施設や備品の整備状況等に自治体間や学校間の格差が生じる懸念も拭えません。

果たしてどこまで成果の伴う教育機会を提供していけるのか・・・。子供の習い事がまた一つ増えるだけというオチにならないことを願うばかりです。

理数分野においては、この他にも高校数学で「数C」が復活したり、数Bにおいて「統計的な推測」が強化される等々、理系人材の育成を推進したい政府の思惑が強く反映された内容になっています。

また、中学理科では「自然の恵みと気象災害」「放射線の性質と利用」が追加されるなど、より実学に即した内容にしようという意図も伺えます。

将来的に理系に進むのか文系に進むのかに関わらず、いずれにしても理系的素養の重要性は増すばかりですし、「算数嫌い!」をいかに撲滅していくか、先生や各家庭の悩みが尽きることは無さそうです。