廃れていく年中行事
いきなりですが、問題です。次の文章はある年中行事の起源を説明したものですが、では、なんという行事の起源を説明したものでしょうか?
日本では「上已の祓い」といって、平安時代、陰陽師がお祓いをし、自分の生年月日を書いた紙の人形(ひとがた)を川に流して厄払いをするようになりました。現在でも京都の下賀茂神社で再現されています。
ひな祭りのことを知らない日本人はいないと思いますが、日本古来の年中行事について、その由来や正式な過ごし方など、正しい知識を有している人は少なくなっています。
しかし、実はこの現象が子供たちの学力にも少なからず影響していると言えば、楽観してはいられなくなりますよね?
最近では、日本古来の風物詩でもある年中行事を、見かけること自体が随分と減ってしまい、話題や問題の中で登場してもイメージできない子供たちが増えています。
ところが、国語や英語、社会など、幅広い科目で今も題材として用いられる傾向があるので、イメージもできないでいると、問題を正しく理解できずにトンチンカンな解釈をしがちなのです。
下の問題は、実際の入試問題で出題された例ですが、「端午の節句って何ですか?」という笑えない質問をしてくる男子も、今や珍しいものではなくなっているのです。

年中行事に親しむことの意義
そもそも年中行事には、お正月のように貴族や武家の儀式に由来するものや、節分や彼岸のように暮らしに深く関わる雑節から生まれたものなどがありますが、いずれも文化や季節感を大切にし、行事を通じて日本の心が養われるものばかりです。
こうした行事の行われる日を「ハレ(非日常)」と呼び、「ケ(日常)」と区別しますが、ハレの日を過ごすことで心身に潤いを与え、「ケ枯れ」を防ぎ、明日への活力にしてきた歴史があります。
また、国際化の進む現代において、日本という国の伝統や文化、価値観を知ってもらうために、あるいは日本人であることのアイデンティティを失わずにいるためには、重要な要素の一つと言えるのではないでしょうか。
「非科学的だ」「迷信だ」と一蹴するのではなく、また教養や学力UPといった目的のためだけでもなく、そこに込められた先人の知恵や日本らしさに触れることで、大切な何かを呼び起こすきっかけとして・・・。
ぜひ、これを機会に、親子で身近なところから年中行事に参加してみてはいかがでしょうか?
お彼岸の期間はそれぞれ7日間あり、このお彼岸の期間に春分の日と秋分の日が含まれているというのが正しい解釈です。そして両日ともに、昼と夜の時間がほぼ同じになる日、つまり太陽が真東から昇り、真西に沈む日です。
仏教の世界では、太陽が昇る東側を私たちが存在する「此岸(しがん)」、そして西側を亡くなった故人の世界「彼岸(ひがん)」と考えられています。
この此岸と彼岸の世界は、太陽が真東から昇り、真西に沈む春分と秋分に最も通じやすくなると考えられているため、お彼岸にお墓参りなどの先祖供養をするようになったのです。
なお、春と秋のお彼岸の違いはお供え物にあり、春のお供え物は「ぼた餅」、秋のお供え物は「おはぎ」とされています。
実はぼた餅とおはぎは、どちらも同じ材料で作る小豆餅であり、実際のところ明確な区別はほとんどありませんが、どうして名前が違うのかというと、それは季節に咲く花に関係しています。
春にお供えするぼた餅は、牡丹の花に見立てられて牡丹餅(ぼたもち)と呼ばれるようになり、秋にお供えするおはぎは、萩の花に見立てられて御萩(おはぎ)と呼ばれるようになったそうです。